医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取った問題で猪瀬東京都知事の釈明が二転三転している。ひとつの小さな嘘を隠そうとするとさらに嘘をつかなければならなくなり、たくさんの嘘の間でつじつまが合わなくなってしまう。最初から嘘をつかなければいいのだが、嘘をついてしまったら、まずは素直に認めることだ。今日は、米国で特許を取得する手続の中で、嘘をついたらどうなるか、そしてその嘘を取り消してもらうにはどうすればよいか、アメリカの訴訟事件から学んでみよう。年の瀬である。今年一年自分のついた嘘を振り返り、嘘を取り消したいと悩んでおられるのは都知事だけではなかろう。人は嘘をつく動物なのだから。 続きを読む
年別アーカイブ: 2013年
「あらゆる一般化は間違っている。これも含めて」
「あらゆる一般化は間違っている。これも含めて」とは、『トム・ソーヤーの冒険』の著者マーク・トウェインの名言である。「男は信用ならぬものだ」などと安易な一般化で人間や物事を理解したつもりになることを戒めたものであろう。「あらゆる一般化は間違っている」と一般化すること自体も、間違いであると自戒を込めたのはウィットに富んでいる。今日は、マーク・トウェインに敬意を払い、特許請求の範囲(特許の保護を求める範囲)の「一般化」の話をしよう。 続きを読む
「クルルンポイ」の損害賠償額の増額判決は外国企業に朗報
「におい・クルルンポイ」という商品をお使いでしょうか?赤ちゃんのおむつをくるるんっとフィルムに包んでポイっと捨てるものです。子どもが大きくなった私にはもう関係ないですが、おむつはトイレには流せないのでこれは助かりますよね。この製品、日本ではコンビ株式会社が販売していますが、製造元はSangenicというイギリスの会社であり、英国ではNappy Disposal Systemとして販売されています。 続きを読む
ibooksはインターネット電子書籍サービスの記述的商標でしかない
Apple Inc.の商標iBooksの使用はJ. T. Colby & Company, Inc.らが使用する未登録商標「ibooks」に抵触するとしてApple Inc.が訴えられた商標権侵害事件は、米国ニューヨーク州南部連邦地裁の2013年5月8日の略式判決によりColby側が敗訴しています(J.T. Colby & Company, Inc. et al v. Apple, Inc.(S.D.N.Y. May 8, 2013))。しかし、これは電子書籍サービスにibooksという表記ができなくなることを意味しません。
ブラックベリー身売りの前に見ておきたいイギリスのコメディ
カナダの通信機器メーカーのブラックベリー・リミテッド(旧リサーチ・イン・モーション・リミテッド)がカナダのフェアファックス・フィナンシャル・ホールディングズを中心とする企業連合に身売りすることが決まった。数年前までは米国人がブラックベリーをもっているのをよく見かけたが、今ではすっかりiPhoneに取って代わってしまった。いよいよブラックベリーが姿を消してしまう前に、ぜひ見納めしておきたいイギリスのコメディがある。 続きを読む
人をほっとさせるレモン飲料なのか、温かいレモン飲料なのか?
カルピス株式会社の商標「ほっとレモン」の商標登録の取消決定を維持する判決が知財高裁から出されました(平成24年(行ケ)10352号(知財高裁平成25年08月28日判決))。カルピス社は商標「ほっとレモン」が「人をほっとさせるレモン飲料」というイメージとともに多くの需要者に周知されてきていると主張しましたが、裁判所は、商標「ほっとレモン」は、「温かいレモン飲料」であることを普通に表示する標章のみからなる商標に過ぎず、「ほっと」の文字部分が長く使用された結果、商品の出所識別機能を有するに至ったものではないとしました。 続きを読む
代理人のミスに寛容な米国特許商標庁ー合衆国の建国の精神に立ち返って考える
特許や商標などの知的財産権を取得する手続きにおける代理人(出願人に代わって特許庁に対する手続きを行う弁理士や弁護士など)のミスは、知的財産権を取得できないという致命的な結果を招くことがある。しかしアメリカという国は懐が深い。日本では考えられないような代理人の致命的なミスがあっても、出願人の権利を維持し、回復しようとする救済処置が充実している。これはアメリカ合衆国の建国の精神に立ち返って理解するとよい。 続きを読む
麻生副総理のナチス発言の再検証ーマスコミの国際発信力の欠如の問題ではないか
麻生副総理兼財務相のナチス発言は、「ナチスの手口に学び、国民が気がつかないうちに憲法改正を企てる」との趣旨に取られて内外の批判にさらされた。私も最初、朝日新聞の発言内容の書き起こしを読んだときは、そのような意味にしか解せなかった。しかし、録音を聞いた上で発言内容を検証してみると、そのような趣旨の発言ではなかったらしいことが見えてくる。そして海外メディアの論調に迎合するだけの日本のマスコミに深い失望を感じる。 続きを読む
土屋アンナさん主演の舞台「誓い奇跡のシンガー」を巡る騒動
土屋アンナさんが主演予定であった舞台「誓い奇跡のシンガー」が昨日突然公演中止となったことで話題になっています。この舞台作品は、身体障害と言語障害を抱える女性歌手・濱田朝美さんの「日本一ヘタな歌手」(光文社)という小説が原案となっているそうです。公演主催者側は、主役の土屋アンナさんが「公的にも私的にも何らの正当な理由なく無断で舞台稽古に参加せず(中略)専らそのことが原因で同公演を開催することができなくなりました」と公式サイトで発表し、「土屋アンナ氏に社会人としての責任をお取りいただくべく,損害賠償訴訟を含む断固たる措置を講じる所存です」としており、穏やかでない事態に進展しています。原作者の濱田朝美さんのブログによれば、土屋アンナさんが舞台稽古への参加を拒否した背景には原作者の著作権の許諾に絡む事情があったようです。
prima facie obviousnessとは
英米法(コモンロー)において、”prima facie”とは、反駁されないならば事実を証明するのに十分である一応の証拠のことです(参考wikipedia: Prima facie)。訴訟において、原告はまずprima facie (一応の証拠)を提示しなければなりません(「一応の疎明」をするとも言われます)。原告が”prima facie”を提示できない場合、被告の反論を待たずに、裁判所は訴えを棄却します。”prima facie”であることは訴えが裁判所で審理されるための前提となります。この考え方は米国の特許出願の審査にも適用されています。 続きを読む