最後の拒絶理由通知、拒絶査定不服審判請求時の請求項の補正は、「限定的減縮」であることが要請されます(17条の2第4項2号)。
【請求項1】A+B+C
について、発明特定事項Bをbに限定する補正により、
【請求項1】A+b+C
とすることは、限定的減縮と認められますが、
Bをb1、b2、b3などに限定することができるとき、
【請求項1】A+B+C
を
【請求項1】A+b1+C
【請求項2】A+b2+C
【請求項3】A+b3+C
と補正することは、増項補正に当たるので、限定的減縮とは認められないとする判決が最近相次いで出ています。
全体として1つの請求項に記載された発明特定事項を限定する趣旨で補正がなされていても、実質的に請求項の数を増加させる補正は、「限定的減縮」とは認められず、補正却下されます。
◆H17. 4.25 知財高裁 平成17(行ケ)10192 特許権 行政訴訟事件
(要旨)
同号の規定は,補正後の請求項が補正前の請求項に記載された発明を限定する関係にあること,及び,補正前の請求項と補正後の請求項との間において,発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることを必要とするとしたものであり,それらのことは,いずれも特許請求の範囲に記載された当該請求項について,その補正の前後を比較して判断すべきものであり,補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっていることを当然の前提としているものであり,請求項の発明特定事項を限定して,これを減縮補正することによって,当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であって,当該一つの請求項を削除して新たな請求項をたてるとか,当該一つの請求項に係る発明を複数の請求項に分割して新たな請求項を追加するというような態様による補正を予定しているものではないとした上,本件のように,一つの請求項に記載された発明を複数の請求項に分割して,新たな請求項を追加する態様による補正は,たとえそれが全体として一つの請求項に記載された発明特定事項を限定する趣旨でされたものであるとしても,特許法17条の2第4項2号の定める「特許請求の範囲の減縮」には当たらないとして,審決の結論を支持した。
◆H16. 4.14 東京高裁 平成15(行ケ)230 特許権 行政訴訟事件
「同号にいう「特許請求の範囲の減縮」は,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるものというべきであって,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そうであってみれば,増項補正は,補正後の各請求項の記載により特定される各発明が,全体として,補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても,上述したような一対一又はこれに準ずるような対応関係がない限り,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しないというべきである。」
◆H17.10.11 知財高裁 平成17(行ケ)10156 特許権 行政訴訟事件
上記の2つの判例を引用した内容。