冒認特許の取戻請求権ーところで「冒認」って何?

Manchester Special Constabulary Patrol平成23年の特許法等の一部改正により、いわゆる冒認出願(特許を受ける権利を有しない者が特許出願人になっている出願)に対する救済措置が設けられました(平成24年4月1日に施行)。冒認出願に対して特許権が設定登録されたときは、真の権利者(発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者)は、冒認出願に対する特許の特許権者に対して特許権の移転の請求をすることができるようになります。

従来、冒認は無効理由なので、冒認に係る特許権を無効にすることはできましたが、冒認に係る特許権を真の権利者が取り戻すことには制約がありました。真の発明者が特許出願をしていた場合、特許権の移転登録手続請求が認められた事例があります(生ゴミ処理装置事件(最判平成13年6月12日))。一方、真の発明者が特許出願をしていなかった場合は、冒認者の特許権を取り戻すことはできませんでした(ブラジャー事件(東京地判平成14年7月17日))。これは、先願主義のもと、真の発明者であっても特許出願しなかった者には特許権を取り戻す権利はないとの考えにもとづいてます。

今回の改正特許法は、共同出願違反や冒認を前提(当事者間の紛争に限る)に、冒認出願に係る特許権の取戻請求権を新設したものです。

ところで「冒認出願」という言葉は現在の特許法にはありませんが、発明者でない者であつて特許を受ける権利を承継しないものがした特許出願のことを指す用語して、広く使われています。

「冒認」という言葉は大正特許法において使われています。大正10年4月30日法律第96号(大正11年1月11日施行版)の特許法の第十条、十一条、五十七条には「特許ヲ受クルノ権利ヲ冒認シタル者」という言葉があります。

「冒」は「冒(おか)す」の意味で、「冒認」は他人のものをいつわって自分のものだと認めることだそうです(以下参照)。

Q0120 法律関係では「冒用」という熟語があるのですが、国語辞典や漢和辞典には出ていません。これは特殊な用語なのでしょうか?

(略)
「冒」という漢字は、訓読みでは「おかす」ですが、この「おかす」には2種類あるように思われます。1つは、危険をかえりみずに何かをする、という意味、「冒険」がその代表例です。もう1つは、神聖な領域や他人の領域に乱暴に踏み込む、という意味で、「冒涜」(ボウトク。「涜」の正字がパソコンでは出ないのはご勘弁を)がその代表です。
『大漢和辞典』を眺めていると、この後者の意味がさらに発展して、他人のものを自分のものにする、というような意味で「冒」が用いられている熟語が目につきました。「冒取」は他人のものをいつわって取る、「冒認」は他人のものをいつわって自分のものだと認める、「冒名」は他人の名をかたる、「冒領」は他人のものをいつわって受け取る、などなどです。おそらく「冒用」も、こういった一連の熟語と同じような「冒」の使われ方から生まれた熟語なのでしょう。そういう意味では、それほど特殊な熟語ではないのかもしれません。
でも待ってください。今、「冒認」をインターネットで検索してみましたが、こっちも「冒認出願」の形で、法律関係のサイトばっかりです。やっぱり、法律の世界でのみ生きていることばなんですよね……。

http://www.taishukan.co.jp/kanji/qa03.htmlから引用)

「冒認」の言葉の由来と意味は、T弁理士から教えていただきました。ありがとう!

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