カテゴリー別アーカイブ: 知財実務

小保方晴子博士の「STAP細胞」特許出願は基本特許となるか?

Stem cell research「数世紀に及ぶ生物細胞学の歴史を愚弄するものである」ー2012年、英Natureが彼女の論文の掲載を却下したときの査読者の評だという。理化学研究所の小保方晴子博士の発見したSTAP細胞はそれほどに「非常識」に満ちている。受精卵から体細胞へ分化すると、細胞は分化状態をメモリのように記憶しており、多能性細胞などの未分化細胞に戻る(初期化する)ことはないというのがかつての常識であり、体細胞を初期化するには高度な遺伝子操作が必要であると考えられていた。小保方博士の発見は、体細胞に一定のストレス(弱酸性の刺激)を与えることで、分化状態の記憶が消去され、多能性を再び獲得するということのようである。

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『永遠の0』ー零戦の左捻り込みと「逆転洗濯機」の発明

「永遠の0」を観ました今年になって映画『永遠の0』を観ましたが、宮部久蔵(岡田准一)は、宮部をライバル視する熟練パイロットの景浦(新井浩文)との模擬空戦で、前から突如消えたと見せかけて、気が付いたら景浦の背後にぴたりとつけていたという、見事な旋回飛行を見せます。あれは「左ひねり込み」という技で、熟練パイロットが使う魔法の技だそうです。しかし、零戦に「左捻り込み」はあっても、「右捻り込み」はありません。 続きを読む

今年ついた嘘を確実に取り消してもらう方法

Naoki Inose Governor of Tokyo Metropolitan Government, at Nishi Shinjuku on Dec. 19, 2012. Hodo-bu Nagata interview. MIURA PHOTO.医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取った問題で猪瀬東京都知事の釈明が二転三転している。ひとつの小さな嘘を隠そうとするとさらに嘘をつかなければならなくなり、たくさんの嘘の間でつじつまが合わなくなってしまう。最初から嘘をつかなければいいのだが、嘘をついてしまったら、まずは素直に認めることだ。今日は、米国で特許を取得する手続の中で、嘘をついたらどうなるか、そしてその嘘を取り消してもらうにはどうすればよいか、アメリカの訴訟事件から学んでみよう。年の瀬である。今年一年自分のついた嘘を振り返り、嘘を取り消したいと悩んでおられるのは都知事だけではなかろう。人は嘘をつく動物なのだから。 続きを読む

「あらゆる一般化は間違っている。これも含めて」

All generalizations are false, including this one. (Mark Twain) http://bit.ly/14kY36b「あらゆる一般化は間違っている。これも含めて」とは、『トム・ソーヤーの冒険』の著者マーク・トウェインの名言である。「男は信用ならぬものだ」などと安易な一般化で人間や物事を理解したつもりになることを戒めたものであろう。「あらゆる一般化は間違っている」と一般化すること自体も、間違いであると自戒を込めたのはウィットに富んでいる。今日は、マーク・トウェインに敬意を払い、特許請求の範囲(特許の保護を求める範囲)の「一般化」の話をしよう。 続きを読む

「クルルンポイ」の損害賠償額の増額判決は外国企業に朗報

cloth nappies (diapers) on the line「におい・クルルンポイ」という商品をお使いでしょうか?赤ちゃんのおむつをくるるんっとフィルムに包んでポイっと捨てるものです。子どもが大きくなった私にはもう関係ないですが、おむつはトイレには流せないのでこれは助かりますよね。この製品、日本ではコンビ株式会社が販売していますが、製造元はSangenicというイギリスの会社であり、英国ではNappy Disposal Systemとして販売されています。 続きを読む

ibooksはインターネット電子書籍サービスの記述的商標でしかない

iBooks icon

Apple Inc.の商標iBooksの使用はJ. T. Colby & Company, Inc.らが使用する未登録商標「ibooks」に抵触するとしてApple Inc.が訴えられた商標権侵害事件は、米国ニューヨーク州南部連邦地裁の2013年5月8日の略式判決によりColby側が敗訴しています(J.T. Colby & Company, Inc. et al v. Apple, Inc.(S.D.N.Y. May 8, 2013))。しかし、これは電子書籍サービスにibooksという表記ができなくなることを意味しません。

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人をほっとさせるレモン飲料なのか、温かいレモン飲料なのか?

Calpis Hot Lemonカルピス株式会社の商標「ほっとレモン」の商標登録の取消決定を維持する判決が知財高裁から出されました(平成24年(行ケ)10352号(知財高裁平成25年08月28日判決))。カルピス社は商標「ほっとレモン」が「人をほっとさせるレモン飲料」というイメージとともに多くの需要者に周知されてきていると主張しましたが、裁判所は、商標「ほっとレモン」は、「温かいレモン飲料」であることを普通に表示する標章のみからなる商標に過ぎず、「ほっと」の文字部分が長く使用された結果、商品の出所識別機能を有するに至ったものではないとしました。 続きを読む

代理人のミスに寛容な米国特許商標庁ー合衆国の建国の精神に立ち返って考える

macro monday | generosity特許や商標などの知的財産権を取得する手続きにおける代理人(出願人に代わって特許庁に対する手続きを行う弁理士や弁護士など)のミスは、知的財産権を取得できないという致命的な結果を招くことがある。しかしアメリカという国は懐が深い。日本では考えられないような代理人の致命的なミスがあっても、出願人の権利を維持し、回復しようとする救済処置が充実している。これはアメリカ合衆国の建国の精神に立ち返って理解するとよい。 続きを読む

prima facie obviousnessとは

prima facie apparel英米法(コモンロー)において、”prima facie”とは、反駁されないならば事実を証明するのに十分である一応の証拠のことです(参考wikipedia: Prima facie)。訴訟において、原告はまずprima facie (一応の証拠)を提示しなければなりません(「一応の疎明」をするとも言われます)。原告が”prima facie”を提示できない場合、被告の反論を待たずに、裁判所は訴えを棄却します。”prima facie”であることは訴えが裁判所で審理されるための前提となります。この考え方は米国の特許出願の審査にも適用されています。 続きを読む

国境をまたいだ訴訟における代理人の秘匿特権

Intellectual Property in Common Law and Civil Law日本企業がアメリカで知財訴訟に巻き込まれた場合に、日本の弁護士/弁理士と依頼者の間でなされた意見交換について秘匿特権があるかどうかが問題となります。日本の弁理士にも秘匿特権を認めるアメリカの判決が出ていることからこの問題は解決したと思っている人が多いですが、そ の理解はかなり怪しいので気をつけなければなりません。 続きを読む