英米法(コモンロー)において、”prima facie”とは、反駁されないならば事実を証明するのに十分である一応の証拠のことです(参考wikipedia: Prima facie)。訴訟において、原告はまずprima facie (一応の証拠)を提示しなければなりません(「一応の疎明」をするとも言われます)。原告が”prima facie”を提示できない場合、被告の反論を待たずに、裁判所は訴えを棄却します。”prima facie”であることは訴えが裁判所で審理されるための前提となります。この考え方は米国の特許出願の審査にも適用されています。
米国の特許出願の審査において、審査官はクレームされた発明の自明性(obviousness)を証明して出願を拒絶することができますが、prima facie obviousness(自明性の一応の立証)はMPEP2142に以下のように説明されています。
- 自明性の一応の証拠を提示する最初の責任は審査官にある。
- もし審査官が自明性の一応の証拠を提示していなければ、出願人は、非自明性の証拠を提出する義務を負わない。
- しかし、審査官が自明性の一応の証拠を提示しているなら、非自明性を立証する責任は出願人に移る。
したがって、審査官が最初にprima facie case of obviousnessを確立することに失敗しているなら、出願人は、prima facieを確立できていない旨を反論することができます。その場合は、上記のステップ2にとどまり、ステップ3まで進みませんので、クレームされた発明が非自明である証拠をあげる必要はありません。
このように、提示された先行技術がクレームされた発明を自明とする一応の証拠となることが審査官によって立証されるまでは、出願人は提示された先行技術に対する発明の非自明を反論する義務はありません。
たとえば、クレームされた発明が引例から自明であるとされていても、引例にはクレームされた発明の重要な構成要素を欠いている場合、審査官は、発明の自明性の一応の証拠を提示したとは言えません。また、クレームされた発明が引例の組み合わせで自明とされている場合でも、引例が開示または教示している内容の組み合わせからは本願発明が得られない場合や、組み合わせの動機付けを欠いている場合なども、審査官は、発明の自明性の一応の証拠を提示したとは言えません。そのような場合、審査官の「自明性」の一応の立証に不備があることを指摘すれば、審査官はいったんは拒絶理由を取り下げて別の引例を探して来なければならなくなります。出願人から本願発明に進歩性がある(非自明である)ことを主張しなくても済みます。これは出願人が発明の進歩性の主張をする中で包袋禁反言を作ってしまうリスク(注1)を避けるのに役立ちます。
(注1)ここでは審査過程で不用意に発明の進歩性を主張することで特許権の範囲を不必要に制限するリスクのことである。
ところで、この記事に付けたflickrの写真、気になりませんか。prima facie apparelというアパレルの会社の商品です。彼らのVisionによると、
At First Sight
This term is mostly evident in law to site first hand evidence but to Brian, the founder of PFA, it was held in a different context. Who you are at a first impression is based mainly from appearance. Well that appearance can state more than just your features, let your apparel tell your story.
やはり世の中「人は見た目が9割」でしょうか。明日からあなたもプリマ・ファキエ・アパレルで!
弁理士 青木武司