月別アーカイブ: 2009年8月

知的財産権の信託による活用とその問題点

信託業法の改正により信託の対象となる資産が財産権一般に拡大され、知的財産権を信託することが可能となった。知的財産信託は、グループ会社において知的財産を集中管理して活用するための方法として注目されている。大企業の場合、子会社、関連会社を含めたグループ会社で大量の特許権などの知的財産権を保有しており、各事業主体が個別に特許権を取得して実施しているため、グループ会社間で権利関係が錯綜していることが多い。グループ会社全体で知的財産を集中管理できれば、権利関係を整理して、無駄を省き、活用を促進することもできる。また、グループ会社間で知的財産が分散している場合の深刻な問題として、小会社や関連会社が買収された場合に、親会社にとって重要な知的財産権が買収者に移転してしまい、親会社がビジネスを継続すると、知的財産権の侵害となってしまうことがある。 続きを読む

買収防衛策としての事業信託

敵対的買収に対する対抗措置の一つに「クラウンジュエル」と呼ばれる方法がある。これは、買収対象の会社が営業上の重要な財産や収益上重要な事業部門や子会社を第三者に譲渡して自社を魅力のないものにすることで買収者の買収意欲を削ぐ買収防衛策である。
会社の事業の全部または一部であっても重要な事業の譲渡の場合には、会社法上株主総会の特別決議が必要であるが、重要な財産の処分は取締役会決議で可能である。しかし、買収防衛策としてこのような財産譲渡を行った場合、重要な財産の処分により企業価値が下がると、株主利益を損なうことになるため、取締役としての善管注意義務違反に問われるリスクがある。 続きを読む