米国特許出願のクレームの記載において、whereby節を書くべきでしょうか、避けるべきでしょうか?
A.whereby節がクレイムの限定事項にならなかった例
Amazon.comのUSP5960411(“ワンクリック”特許)
Claim 1. A method of placing an order for an item comprising:
under control of a client system,
displaying information identifying the item; and
in response to only a single action being performed, sending a request to order the item along with an identifier of a purchaser of the item to a server system;
under control of a single-action ordering component of the server system,
receiving the request;
retrieving additional information previously stored for the purchaser identified by the identifier in the received request; and
generating an order to purchase the requested item for the purchaser identified by the identifier in the received request using the retrieved additional information; and
fulfilling the generated order to complete purchase of the item
whereby the item is ordered without using a shopping cart ordering model.
Amazonの明細書では、single-action ordering(いわゆる「ワンクリック」)と、shopping cart ordering(shippingとbillingの情報の確認フェーズがある)とは対立する概念であるから、whereby節は限定事項にならなかった。
Amazon.com v. Barnesandnoble.com事件(2001)においてBarnesandnoble.comの”Express Lane”がクレイム1を侵害するかどうかが問題となった。Barnes and Nobleは”Express Lane”はshopping cart orderingのパラダイム内で行われているから、クレイム1を侵害しないというが、やっていることはアマゾンの「ワンクリック」と同じ。
B.whereby節を書くべきか、避けるべきか?
(1)「単にクレイムの限定事項の結果を述べるに過ぎないwhereby節はクレイムの特許性に何も付け加えない」という原則に立つこと。必ずクレイムの限定事項となるwherein節とは法的な位置づけが全く違うことに留意する。
(2)上記原則を確認するため、whereby節を外して特許性の有無をテストしてみる。whereby節の内容が特許性に影響しているなら、本来は、in such a manner that/so that/so as toなどの表現を使うべきである。(戦略的にwhereby節を使うのは別。)
(3)whereby節の内容が特許性に影響しないなら、それはクレイムの作用効果をわかりやすくするためであろう。その場合、whereby節は本当に必要か?(上記のAmazonのワンクリックのクレイムの例)
(4)whereby節を上記原則通り使っていたとしても、審査過程で先行技術との対比説明をすることによって、whereby節の内容がいつの間にかクレイムの限定事項になってしまうこともある(Hoffer v. Microsoft Corp事件(2005)参照)。その意味でプリアンブルの問題と同様である。(出願人にリスクの十分な理解を求める必要がある。)
(5)whereby節の内容が特許性に影響することがある場合は、wherein節に変更して、その内容を従属クレイムに設けるのも一案である。