「名誉毀損ツーリズム」が行われているのをご存じですか

Village Icon今、国際私法の世界では、Libel Tourism(名誉毀損ツーリズム)というのが話題になっていますが、ご存じですか。出版物やブログなどを海外に向けて発信しているあなた。あなたも気がついたら、ウェールズの裁判所に名誉毀損で訴えられているかもしれません。

米国特許訴訟ではしばしば「フォーラムショッピング」(注1)が行われます。原告(米国特許権者)は、米国内で数ある地方裁判所から原告に有利な裁判所を選びます。テキサス東地区にある小さな裁判所は、特許訴訟のフォーラムショッピングで選ばれることで有名です。

(注1)フォーラム・ショッピング(英語:forum shopping)とは、ある事件について複数の国(一国内の地域により法律が異なる場合は、地域も含む。以下同じ。)に国際裁判管轄が認められる見込みがある場合に、原告が自分に有利な判決がされる見込みのある国の裁判所に訴訟を提起する訴訟戦術のことをいう。(wikipediaより引用

フォーラムショッピングには、「ウィンドウショッピング」のイメージがあります。

それに対して、名誉毀損の訴訟を起こす場合、自分に有利な判決がなされる見通しのある外国の裁判所を探して提訴することが行われているそうで、これを「名誉毀損ツーリズム」(Libel Tourism)と呼んでいます。名誉毀損の成立を広く認める英国(特にイングランドとウェールズ)が裁判地として選択されることが多いといいます。

アメリカでは、名誉毀損であることの立証責任は、名誉毀損を訴える側にあり、原告が勝訴するのが難しいと言われています。言論の自由を手厚く保護するためで、そのおかげで政治家や会社の不正を暴く報道もやりやすいです。英国では被告側に名誉毀損でないことの立証責任が転嫁されるので、被告に不利(原告に有利)になります。

アメリカで社会の不正を暴く報道しても、名誉毀損の訴えが英国の裁判所に持ち込まれて争いになる可能性があり、自由な報道や言論の妨げになるおそれがあります。

名誉毀損ツーリズムは、旅行会社に名誉毀損訴訟に有利な国を探してもらう「海外旅行」のイメージかなと思いました。(「名誉毀損名所巡り」という名訳をネットサーフィンで見つけました。)

フォーラムショッピングにしても、名誉毀損ツーリズムにしても欧米の人たちはネーミングが上手だなあとつくづく感心します。

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