Bilski v. Kappos最高裁判決の要旨

2010年6月28日、米国最高裁判所は、待ち望まれていたBilski v. Kappos事件における見解を表明した。この事件は、第101条における特許性の及ぶ範囲の決定を担うものである。本最高裁判決の焦点は、方法クレーム、特にビジネス方法およびソフトウェアのクレームの法体系に基づいた特許可能性の判断に用いられるテストを決定することにあった。

要約すると、米国最高裁判所は裁量上訴(サーシオレイライ)を認め、ビルスキ事件(原審)(In re Bilski)(545 F.3d 943 (2008))の上訴について口頭弁論を実施した。ビルスキ事件(原審)は、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の大法廷判決であり、商品相場におけるリスクヘッジの方法を伴う特許クレームの拒絶を支持したものである。ビルスキ事件(原審)の判決では、もはやState Street Bank v. Signature Financial事件において規定された基準(方法とは、「有用で、具体的、かつ、現実的な結果」をもたらすことが必要である)には依拠せず、machine-or-transformation test(機械または変換のテスト)が特許権の保護対象となる主題に適用すべきテストであると繰り返した。

上訴審であるBilski v. Kappos事件において、最高裁はBilskiのリスクヘッジのクレームを拒絶する下級裁判所の判決を支持した。そして何よりも、machine-or-transformation test(すなわち、クレームされた方法は(i)特定の機械あるいは装置に結びつけられている場合、または(ii)特定の物品を異なる状態あるいは物に変換させる場合において特許可能であるということ)は、第101条の記載の解釈に基づいて特許性を判断する際の唯一のテストではないと述べた。

最高裁は、「machine-or-transformation testは、ソフトウェア、高度診断医学技術、およびリニアプログラミング、データ圧縮、デジタル信号の操作に基づく発明の特許性について不確実性を生じさせる」と述べ、また、「本裁判においては、特定の発明の特許性について言及するものではなく、まして上述の情報化時代の技術のいずれについて特許権保護を受けるべきか否かを論じるものではない」と述べた。最高裁は過去の判例を取り上げ、具体的に、Gottshalk v. Benson事件(409 U.S. 63 (1972))、 Parker v. Flook事件(437 U.S. 584 (1978))、およびDiamond v. Diehr事件(450 U.S. 175 (1981))は、特許性を判断するテストとしてmachine-or-transformation testのみに依拠したものではなかったと述べた。最高裁は特許性を判断する新たなテストについては詳細を述べず、連邦巡回裁判所によるより適切なテストの作成を排除しなかった。

最高裁はまた、ビジネス方法特許は特許性を有さないとすることを拒絶した。すなわち、抽象的なアイデア等を対象としない限り、ビジネス方法は本質的に特許性を有さないわけではないとした。

本最高裁判決を受け、特許性判断テストの変更に対処するため、米国特許商標庁(USPTO)は程なく本件について新たなガイドラインを公表すると見込まれます。上記の件について米国特許商標庁が新たな政策を作成する場合はお知らせいたします。

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