Facebook, Inc.のYahooに対する特許訴訟戦略

Mark ZuckerbergかつてYahooは、ソーシャルネットワーキングとオンライン広告に関するYahooの10件の特許権をFacebook, Inc.が侵害しているとして提訴したことがありました(2012年3月12日)。Facebook, Inc.は折しも、同年5月にIPO(株式公開)を控えていて訴訟を避けたい時期だった。このときYahooは3000以上の特許を保有していたが、Facebook, Inc.は56件の特許と503件の特許出願があった(2011年12月31日時点)に過ぎず、大人と子どもの相撲のように知財力の差は歴然としていた。このときFacebook, Inc.が取った訴訟戦略は賢かった。

なんと、2012年3月22日Facebook, Inc.は、YahooがIBMからライセンス(実施権)を受けていたIBM特許をライセンサであるIBMから買収したのだった。その上で、Facebook, Inc.はIBMから買収した750件の特許をYahooに新たにライセンス契約したのだ。おぬし、やるなあ!

YahooはIBMから特許のライセンスを受けて安心していたが、その特許の持ち主がFacebook, Inc.になってしまった。それは慌てるだろう。一般に、ライセンスを受けた特許が移転して特許権者が変わると、元の特許権者(この場合IBM)とのライセンス契約は、新しい特許権者(この場合Facebook, Inc.)に継承されるとは限らないし、また、元の特許権者から受けた非独占的実施権(ライセンス)は、新しい特許権者に対して対抗できない(ライセンスは新しい特許権者に対して効力をもたない)。日本の特許法は、特許権が移転した後でも通常実施権を新しい特許権者に対抗できるように法改正されたが、アメリカでは、そういうことは法律ではなく、当事者間の契約で個別に定められることが多い。ライセンス契約の内容は、通常、ライセンサ(この場合IBM)に有利、ライセンシ(この場合Yahoo)には不利になっていることが多いため、特許権移転後のライセンス契約の承継や実施権の対抗についてはライセンシに有利には定められていないだろう。図解すると、Yahooは以下のような事態に陥ったのであろう。

facebook vs yahoo

 

2012年7月6日、YahooはやむなくFacebook, Inc.に対する提訴を取り下げて和解。互いの特許のクロスライセンス契約を締結するに至った。

IBMがFacebook, Inc.を助けた構図であるが、IBMにしても保有特許を売却して巨額の売却益を得ることができた。

「A社が特許侵害で訴えてくるなら、A社に特許をライセンスしているB社の特許を我々は買い占めて対抗する」というFacebook, Inc.の強い意思と警告が読み取れる事件だった。知財ビジネスの最前線ではこんなすさまじい戦闘が繰り広げられているのです。

Facebook, Inc.のYahooに対する特許訴訟戦略」への2件のフィードバック

    1. Aquila 投稿作成者

      これはどうも、お読みいただきありがとうございます!お役に立ててよかったです。

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